平成初期に誕生したビルが、時を経て大胆にリノベーションされました。
ただの改修ではありません。
これは、オフィスビルの新たなスタンダードを提示する「リブート(再起動)」とも言える試みです。
まず、訪れる人の目を引くのはビル正面のスチール窓。
大きなガラス面が幾何学的に並び、外光をたっぷりと取り込むことで、室内は自然な明るさに包まれます。
無骨でありながらも開放感のあるデザインは、ビル全体に温かみを与え、外観にも独特の存在感を醸し出しています。
この窓が、ビルの新しい顔として街並みにしっかりと調和しつつも、個性を放つ要素となっています。
内部に足を踏み入れると、まず出迎えるのはラワンとガラスで仕切られたパーティション。
無機質な素材感に、ほんのりとした温かみを感じるラワンの質感。
この対比が空間にリズムを生み、どこか心地よい違和感を与えます。
壁には木毛繊維板を使用し、テクスチャーが空間に奥行きを加えています。
天井には黒い塗装を施し、シックで引き締まった印象を演出。
オフィスにありがちなツルツルピカピカの仕上げではなく、ここには「本物」が息づいています。
トイレのタイルや建具に至るまで、フェイクな素材を最低限に抑え、本物の質感を大切にしています。
アクセントとして、ヴィンテージの照明が控えめながらも存在感を放ち、外観を引き締めています。
インダストリアルな無骨さ、オーセンティックな安定感、そしてオールドアメリカンのノスタルジー。
これらが絶妙にミックスされたこのビルの空間デザインは、どこか懐かしくもあり、新鮮さを感じさせます。
CUSTOMER VOICE
STAFF VOICE
・ビフォーの印象
この建物は、周囲に事務所や倉庫が立ち並ぶエリアにある、ごく一般的な鉄骨造ALCパネルの事務所兼倉庫でした。外観や雰囲気からも、正直なところ「機能優先」の印象が強く、特に目を引くような特徴はありませんでした。
・見どころ
そんな“普通”の建物を、まるで別の用途の建物かと思うような姿に生まれ変わらせたのが今回のリノベーションです。シンプルだった外観に個性を与え、来訪されるお客様に「おっ」と思っていただけるような存在感を持たせました。一般的な事務所兼倉庫が、空間としての魅力も備える場に変わった事例だと思います。
・打ち合わせで印象に残ったこと
とても嬉しかったのは、お施主様が弊社の事務所を見て「こういう雰囲気にしたい」と思ってくださったことです。実際の空間を見て、信頼してお声がけいただけたというのは、私たちにとって大きな励みになりました。
・こだわったところ
一番こだわったのは、建物の第一印象を大きく変える外観のデザインです。スチール製の窓枠や、夜間でも印象的なバックライトのサイン、大胆に張り出した大きな庇(ひさし)など、素材やスケール感でメリハリをつけました。以前の姿からは想像できない、ぐっと雰囲気のあるファサードになったと思います。
・この店舗で特に好きなところ
個人的にとても気に入っているのが、商談室と社長室に使った木製のパーテーションとアンティークドアの組み合わせです。無機質になりがちな事務所空間に、温かみと物語性を持たせてくれるアイテムたちで、訪れる人の印象にも残る空間に仕上がりました。